植物の一生を通じてオルガネラは様々な働きをします。では、そのオルガネラの機能がおかしくなったら、植物はどうなってしまうのでしょう? ここでは、オルガネラの機能がおかしくなった結果引き起こされる植物の様子をご紹介します。画像をクリックすると大きな画像または動画がご覧になれます。
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小胞体品質管理と植物の成長と発生
葉緑体分化の異常と葉の「斑入り」
種子が発芽する時にはエネルギーを必要とします。シロイヌナズナは種子に貯めた脂質を分解して発芽に必要なエネルギーを獲得します。写真はシロイヌナズナの種子を播いて7日目の様子です。野生型である右の3個体はきちんと発芽していますが、左の ped1 という変異体は発芽できず種子のままです。 ped1 は、ペルオキシソームの中で機能するチオラーゼという酵素が欠損した変異体です。ペルオキシソームには、種子の発芽時に脂質を分解するという機能があります。チオラーゼを欠損したペルオキシソームでは、この機能が働かなくなるので、 ped1 変異体ではせっかく貯めた脂質を利用できないのです。図中のバーは1 cm。
オルガネラ内の代謝系が正常に機能するためにはエネルギーが必要です。この動画はシロイヌナズナの芽生えの様子を示しています。左の9個体が野生型、右の9個体がPNC1、PNC2という2つのタンパク質の機能をRNAiという手法で同時に抑制した変異体です(以降、 pnc1/2i と呼びます)。2つのPNCはペルオキシソームの膜に存在するタンパク質で、発芽時にペルオキシソーム内へATPを輸送していることが明らかにされています。 pnc1/2i では、このATP輸送が低下しているために、ペルオキシソーム内で行われるべき脂肪酸の代謝が抑制され、その結果、発芽に必要なエネルギーを獲得できなくなります。
植物も動物同様、病原菌やウイルスの攻撃に曝されています。その対抗策の一つがプログラム細胞死と呼ばれるもので、感染してしまった細胞を自ら殺して周りの細胞に伝搬するのを防ぎます。2枚の写真はタバコの葉で、どちらも右側半分 (星印がついている側) にタバコモザイクウイルスを接種してあります。左の写真 (WT) は野生型で、ウイルスを接種された部位が細胞死を起こしていることが分かります。一方、右側の写真 (-vpe) は液胞タンパク質の成熟化に必要なVPE (Vacuolar processing enzyme) 遺伝子の発現を抑制したものです。野生型と異なり細胞死は起こっていません。一見健康そうにみえますが、実は葉の中でウイルスが増殖し、それが植物全体へと広がっていずれは枯死してしまいます。このように、液胞が関わるこの機能がおかしくなると植物は病気に対して抵抗できなくなるのです。