電子顕微鏡写真の説明

植物細胞は、植物の種類はもちろんのこと、同じ植物においても観察する組織や成長段階によって中の様子が異なっています。左の写真はシロイヌナズナ種子の子葉の電子顕微鏡の写真です。タンパク質を蓄えたプロテインボディと脂肪を蓄積しているリピッドボディにその大部分が占められていることが分かります。発芽直後の植物は、すぐに光合成ができないため自分でエネルギーを作り出せません。そのため、種子の中に蓄積しているタンパク質や脂肪を分解して得られるエネルギーを利用して成長します。この時期の子葉細胞のオルガネラは、貯蔵しているタンパク質や脂肪を利用するという機能を担っています。

一方、右の写真は、同じくシロイヌナズナの子葉の電子顕微鏡の写真ですが、上の写真とは全く様子が異なっています。これは、発芽後光があたって緑化した子葉のものです。この時には葉緑体が発達して光合成を行うことができるため、自分でエネルギーを生産できるようになります。そのため、貯蔵物質を分解する必要はなくなるので、細胞内のオルガネラの機能が、光合成や光合成産物を利用する機能へと変わります。このようなオルガネラの機能転換が植物の営みにおいて大切な役割を果たしています。一見なにもないように見える中央の部分は発達した液胞ですが、これもプロテインボディが機能転換したものです。